さて、前回に引き続き鏧子の話で今回は製作工程です。鏧子の原料は黄銅版(真鍮の別名)で、鏧子を置いた状態の上から端(はた)胴(どう)底(そこ)の三つの部分からなります。上の部分は厚いですが、胴と底にかけて薄くなっていきます。そして鏧子上部の加工から始めていきます。ここの部分というのは、鏧子の音色を決める下仕事なので、重要です。真ん中の胴も同じように作業していきます。次に底絞りです。くぼんだ木の上で、金槌を使い、平らな板を徐々に丸くしていきます。そして三つのパーツを溶接で接着していきます。そして接着面を金槌でつぶしていき、丸みの帯びた形に整えていきます。そして熱い炉にいれて焼きなまして金属を柔らかくしてまた金槌でたたいていきます。この作業を何度か繰り返していきます。そして作業台である金床に合わせて、すき間なくたたいていき仕上げていきます。それから前回お話しした調律と移っていきます。表面の黒っぽい色は色付屋さんという別の工房にもっていって着色して完成です。

鏧子には同じ寸法でも中目、重目(一段上がり)、二段上り、三段上りの4種類があります。その違いは口径1尺の鏧子を同じ1尺の材料を使用するのが中目、一段厚い1.1尺用の材料を使用するのが一段上がり、1.2尺、1.3尺用の材料を使うのがそれぞれ二段三段上がりといいます。厚みが厚いほど、音の余韻が長いので、小さな和室のような仏間で使用するには中目、小さめの本堂でしたら、一段上がり、標準的な本堂でしたら、二段上がり、かなり大きな本堂では三段上がりというふうに、使う場所の大きさに合わせて、選べるようになっています。

また鏧子は修理できます。これは鏧子の特徴なのではないでしょうか。りんや沙羅などの銀色をした鳴り物は一度割れたりすると修理がききません。一方鏧子は一度、先ほどの焼きなましの工程をへて金属をよみがえらせ汚れや着色している塗料をはがし、割れなどがあれば、そこを溶接し、へこみを直し元の形にします。そして新調と同じく調律、研磨着色と工程をへて完成です。私も修理はまだ手がけたことがないので、工房探訪というのはお客様にも修理を紹介できますい知識も深まります。それを実感した今回の訪問でした。