職人探訪【木地師編】/香華堂報157号[2014,02/01発行]

仏具の最初の工程といえばまず木地です。その木地の職人さんのことを木地師と呼びます。その木地師も大きく分けて御本尊や高僧像を安置する宮殿や厨子、そしてそれらを支える須弥壇などを製作される宮殿師(くうでんし)。また机師と呼ばれ宮殿や厨子の前に置いて、五具足などを置く机を作る机師。そして障子や欄間など本堂の大きさに合わせて、ピッタリはまるように製作する建具師さんなどがいます。欄間の中の牡丹や天人さんなどを彫る人は木地師と呼ばず彫刻師といいます。

その木地の職人さんたちも時代はかわり、一昔前までは伝統的な形さえ作ればよかったのですが、現在は伝統的なものがあまり売れなくなり新様式のものや特注のものを多く作られるようになりました。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、木地師は伝統的な仏具をつくる際には設計図がなく『つえ』と呼ばれる印がしてある長い1本の棒で仏具を製作されます。その一本だけで大きな屋根の宮殿などを製作されるので見事です。一方最近の新様式の仏具は図面を書いて細かく寸法まで入ったものを元に製作されていきます。

京都の仏具がなぜ全国的にブランドとして定着したのかと申しますと京都には各宗派の本山がありますので、すぐに見に行くことも可能ですし、実際本山の仏具の修理を手がけられることも多々あります。なぜ本山の仏具がいいかと申しますと、本山の仏具は”かっこう”がいいのです。お堂が大きいので、仏具のサイズも必然的に大きくなり、スタイルがぶかっこうではごまかしがききません。仏具は分業製で、しかも京都では前述のように木地師といってもさらに細かい区分で分かれていますので、宮殿師は宮殿ばかりを一生作り続けることになります。ところが地方では受注数も少ない為そこまで分業化されておらず、宮殿も作れば建具も作る職人さんがほとんどです。経験がものをいう業界において、一人の職人が手がける経験数が圧倒的に違います。また、仏具の作り方も伝言ゲームのように地方に行けば行くほどその地域独特のスタイルややり方のアレンジが加わっていくので、“かっこう”が本山よりかけ離れていくことになります。木地の表面は漆や金箔で隠れてしまいますが、“かっこう”はあとから手直しすることができない仏具の要です。

また木地の職人さんは製作から搬入まですべてのことを考えなければなりません。納品の時にどのような状態で搬入するのか他の仏具との兼ね合いはどうだろうかと考えてもらう時もあります。お寺の現在置かれている仏具や型合わせなどを伝えるのが私たち仏具屋の仕事です。

左記は今回訪問した職人さんが机を製作されたところの写真です。まだ彫刻が入っていないですね。彫刻の部分に入っている無地の板を木取りといい、彫刻師さんい持って行きます、その木取りを元に彫刻師が彫刻を彫って行きます。   

次回は彫刻師さんの仕事について紹介したいと思います。