職人のつぶやき(掛軸表具師編)

 表具と一口にいうても、掛軸、額、屏風、襖、本堂の壁画など、いろんな仕事がありますなあ。今回は掛軸を例に上げてみましょか。掛軸はお寺の大きなもんですと、そのほとんどが修復です。お預かりした古い掛軸の字や名号を書いた本紙だけを切り離し、破れた部分や、薄くなった部分に後ろから、紙や絵絹(えぎぬ)(絵画用の絹の布)を、現在使われている本紙のものに合わせて貼っていきます。なるべく小さくして、裏から目立たないように貼ります。まわりのすすけた色に合わせるため、紙や絹地自体を黒ぽっく染めることもあります。絵画の場合、次に表から、補彩といって、まわりの色に合わせて、彩色(さいしき)していきます。絵によっては、裏からも、補彩する場合があります。これは絵に、奥行感を出すための手法です。本紙の修復が終ったら、次に裏打ちの紙を貼り、周りの金襴を貼っていきます。それぞれの工程に進むときに、その都度、きっちり乾かさないと、反りの原因になります。修復仕上がったときに、“腹が出ている状態”両端が後ろに反っている時は、巻いて、しばらく置いておけば直りますが、逆に、両端が前に出ているときは、真直ぐになりにくいです。それと、巻いて片付ける時に、あまり強く巻くと本紙を傷める原因になってしまいます。あまり、強く力を入れず、より大切にしたいものであれば、大きく巻ける心棒がありますので、それで巻くといいでしょう。掛軸は表具の中でも、基本中の基本。しかしながら、ちょっと油断すると、前にも後ろにも反ってしまいます。心と同じで、真直ぐにするのは、難しおすなあ。さっ、つぶやいてんと、そろそろきばりまひょ。

 

大谷派具足

 大谷派の具足の大きな特徴は燭台が亀の土台に鶴の燭という独特の形をしていることです。鶴も亀も口を開いた阿形(あぎょう)の相と吽形(うんぎょう)の相の燭台があります。五具足の場合、口を開いた鶴亀は向かって右側に、閉じた鶴亀を向かって左側に配します。そして、花瓶一対、真中に香炉です。三具足の場合は、向かって右側の鶴亀を用い、花瓶は向かって左側のものを用います。鶴は蓮軸(れんじく)をくわえています。蓮の実が正面、蓮の葉が外側、蓮の蕾(つぼみ)が内側になるよう差します。花瓶には八藤紋と、抱牡丹紋が交互に2つずつ彫金されていますが、八藤紋が内側にくるようにします。種類は阿弥陀堂型と御影堂型があります。その見分け方は花瓶で判断できます。阿弥陀堂型は大きく両耳が張り、渦巻き状の模様になっています。一方、御影堂型は丸型のものと、角型のものがありますが、一般に丸型を用いることが多いです。また四鰭(よつひれ)といって紋と紋の間にある突起物を鰭とよびます。本来、阿弥陀堂型を三具足で、御影堂型の角型を五具足であまり用いません。また、丸角、角丸といって、花瓶が丸型の場合、香炉は角型、花瓶が角型の場合、香炉は丸型になります。(阿弥陀型は丸型とみなします。)

 また、香炉、花瓶(阿弥陀堂型は除く)鶴亀は、全体に彫金のあるものと、無いものの2種類ございます。 

 大谷派の具足で、いちばん困っていらっしゃるのが、お磨きのことと思います。最近は、セラミック加工といい、真鍮の色をそのまま保ちながら、表面に加工する方法を採り入れることが多くなってきました。鶴や亀、生き物の形をそのままあらわした豪華な具足といえるでしょう。