特別編集/香華堂報240号[2021/12/01発行]

京都ぶらり旅(西本願寺唐門・伝道院 祇園閣・金戒光明寺)

 

京都市京セラ美術館が開館一周年を記念し、連携企画として京都市内の寺院や建築物が数ヶ所公開されましたので、その中から三ヶ所選んで行ってきました。

西本願寺伝道院

まず、向かったのは西本願寺伝道院。10時からでしたので、先に西本願寺南側に40年ぶりに修復された唐門を見にいきました。漆や金箔が新たになり緑を基調とした彩色が見事なまでに色付いた唐門は圧巻で優美でした。

西本願寺唐門

それから西本願寺伝道院に向かいました。伝道院は私の母校である元小学校(現在はホテルが建設中)の斜め前にあるので外観は馴染み深いのですが、内部は入ったことがないので興味津々でした。伝道院は築地本願寺や次に紹介する祇園閣を手がけた伊藤忠太によって設計され煉瓦造りやイスラム様式を取り入れたドーム式の屋根など洋風建築が特徴的な建物です。内部は外観とは違い重厚な趣でした。特に印象的だったのは2階の講堂で、一部折り上げ式の重厚な天井、ご本尊は名号軸が掛けられ、仏具も普段見られない骨董的なもので興味深かったです。

その上には額が掲げられ、開講の偈 「無上甚深微妙の法は百千万劫にも遭うこと難し 我いま見聞し受持することを得たり 願わくは如来の真実義を解してたてまつらん」と浄土真宗の生活信条、そしてもう一つの開講の偈「願わくはこの功徳を以って平等に一切に施し同じく菩提心を発して安楽国に往生せん」でしたが仏教各派でも用いられているようですね。

祇園閣

次に向かったのが、東大谷近くにある祇園閣です。祇園祭の鉾を似せた印象的な建物で大雲院という浄土宗寺院の境内地にあります。大倉財閥の大倉喜八郎が金閣・銀閣に続く銅閣として建設したようです。

まず入口正面に釈迦如来像と獅子がお迎えしてくれています。階段を上がると壁面や階段の裏側に敦煌(とんこう)や莫高窟(ばっこうくつ)壁画の模写が描かれていてインド風な雰囲気です。最上階の望楼に着くと東大谷や南禅寺を見渡すことができて壮観です。

金戒光明寺

次に向かったのは金戒光明寺です。浄土宗の寺院で、今回の訪問の目的は方丈に安置されている親鸞聖人御木像の「そばくいの木像」を見学することです。今まで見てきた各寺院にある「そばくいの木像」よりも大きく玉眼なのでしょうか、目が見開いるように思いました。この他にも大きな日本最大級の長さ6メートル、重さ420㎏の彩色の幢幡珱珞や庭園など見どころが多くありました。

京都はまだまだ未訪問の寺社仏閣が多くあるので、一つずつ訪ねてより一層見聞を広めればと思います。

私のお寺めぐり/香華堂報239号[2021/10/01発行]

大悲閣千光寺 禅宗臨済 単立
京都市西京区嵐山中尾下町62

以前、桜を見に嵐山周辺のお寺へ訪れた際、大河内山荘から大堰川(保津川)はさんで対岸に見えるお寺が気になり、いつの日か行ってみたいと思っていました。今回、そのことを思い出したので、そのお寺へ行ってきました。

お寺の名前は大悲閣千光寺、禅宗のお寺様です。嵐山渡月橋の近くに車を止め、渡月橋の南側を西へ西へと進んで行きます。Googleナビでは20分となっていましたが、休憩を含め30分は見といた方がいいでしょう。奥へ奥へと進むと、大堰川の対岸が賑わいのある風景から原風景にかわっていきます。しかしながらこの原風景も江戸時代に人の手が加えられたと調べて分かりましたが、今では到底思えず自然豊かな風景となっています。道沿いにも小さな滝が現れ、心も洗われていきます。到着地点手前で、ようやく二股に分かれた道が見えてきます。右への道は近年急成長した某リゾートホテルの入口、そして左が大悲山千光寺へ向かう道です。ホテルの宿泊者は渡月橋から専用の船が出ているようです。そしてその道を進むと、再び二股の道が現れ、そこに用意されている杖をお借りして左の階段を登って行くと目的地の大悲山千光寺の山門の前に到着します。山門を過ぎ鐘楼の横を通り過ぎると係の女性がおられ一人400円の入場料を払って入山します。

まずは入口にある湧き水で手や口をすすぎます。水はたいそう冷たくて気持ちよく甘い口当たりです。それから観音堂に上がり、扇風機で涼みながら雄大な景色を堪能します。肉眼で対岸の大河内山荘展望台や京都市内が遠くに見えますが、双眼鏡があったので、お借りすると清水寺や霊山観音が見えました。市内中心部はまだまだ京都特有の蒸し暑さですが、ここは時折涼しい風が部屋を通り抜け、爽やかな居心地です。

それから本堂に向かいお参りしました。ご本尊は源信僧都作といわれる千手観音像、向かって右脇には角倉了以像が安置されています。入口でもらった案内によると、ここのお寺は京都の豪商であり高瀬川、富士川、天竜川の河川開発工事を手掛けた角倉了以が大堰川の工事にあたり殉難した方々を弔うために嵯峨の中院にあった千光寺を移転して創建されたお寺だそうです。

帰りには梵鐘が一人3回まで撞けるということで、息子が撞いておりました。帰りは景色を見ながらゆっくり帰りましたが、川遊びをしている親子連れもおり微笑ましかったです。緊急事態宣言中なので、人出はそんなに多くなかったですが、コロナが落ち着いたら多くなりそうな予感がします。京都の隠れた名所、コロナが落ち着いたら、是非足を運んでみてください。

聖徳太子と法隆寺 ~奈良国立博物館~[2021/06/01発行]

2021年は聖徳太子1400年遠忌に当たり各地で法要やイベントなどが行われているのは皆さんもご存知だと思います。法隆寺をはじめ多くの聖徳太子とゆかりのある奈良では奈良国立博物館で聖徳太子と法隆寺の特別展が4月27日~6月20日まであり、またとない機会と思い観覧してきました。コロナ禍なので事前に午後2時半に予約しておりましたが、早く着いてしまったので、隣の仏像館を先に観覧してきました。

仏像館は幾度となく行っておりますが、丁度、金峯山寺の高さ5mの金剛力士像が安置されていました。これは仁王門が修復されるのに伴い金剛力士像も修復されるようですが、令和10年(2028年)まで公開されるようです。仏像館に入るとまず、金剛力士像を目にすることができますが、順路として他の仏像を見てから正面に回るようになっています。そして通路を抜けて広場の両側に大迫力で立っています。筋肉の細部まで表現されており間近で見ると筋肉の躍動感が手にとるようによく分かり圧巻です。写真オッケーでしたので阿吽像ともに撮ってきました。

さて時間が来たので本館に向かいました。10分前でしたが、すでに多くの人が並んでいました。見どころはいくつかありますが、奈良国立博物館限定の聖徳太子絵伝や玉虫厨子には多くの人が群がっていました。玉虫厨子では玉虫の羽根が残っている個所がまだ数か所あるのですが、簡単には見つからず目を皿のようにして見つけました。

まだまだ見どころは多くありますが、特にポスターにも掲載されている法隆寺金堂に安置されているアルカイックスマイルの薬師如来像がすぐ目の前で見られたり法隆寺聖霊院(しょうりょういん)の聖徳太子像は、写真では見たことはあるのですが、至近距離で拝観できたので感動いたしました。特にこの聖徳太子像はX線で撮られた写真も展示され、聖徳太子の口元に救世観音像の頭部が来るように内部に組み込まれている様子が見てとれます。あたかも聖徳太子の発する言葉が観音様の言説のように作製された昔の方の思慮深さには感銘いたしました。他にも一万円札の絵柄の原画となった聖徳太子二王子像(模本)や二才像、国宝の夢違観音像なども展示されています。博物館近くのなら町も新たなに奈良晒で有名な中川政七商店の複合施設ができて活気づいていますので、帰りには是非お寄りください。

 聖徳太子と法隆寺展は場所を東京に移して東京国立博物館で7月13日~9月5日まで開かれます。

親鸞聖人ご旧跡めぐり/香華堂報237号[2021,06/01発行]

きらら坂~比叡山 京都市左京区一乗寺竹ノ内町23(きらら坂碑)

ゴールデンウイーク前に緊急事態宣言が出て、密にならず香華堂報の取材先の候補はないかと考えておりましたら、そうだ「きらら坂」にはまだであることを思い出し、どうせなら比叡山まで登ってしまおうということで行ってきました。

ご存知のように「きらら坂」は親鸞聖人が比叡山と京都を結ぶ最短ルートの登山道としてよく使われた道として有名です。法然聖人や日蓮聖人、道元禅師などの高僧もよく通られたそうです。特に親鸞聖人が六角堂へ100日間参籠されたことを思うとその凄さを感じざるをえません。

きらら坂の登山口までは京都市内から車で30分、電車では1時間ほどかかります。修学院離宮の南側の音羽川を上流に目指せば、きらら坂の登山口に辿り着きます。修学院離宮を右に折れ、修学院離宮内ののどかな田園風景をみながら音羽川沿いを上流に目指します。音羽川は水がきれいで歩いていても清々しいです。

10分ほどで雲母坂(きらら坂)と雲母橋について書かれた駒札に辿り着きます。

そこから橋を渡り右に行くと正面に「親鸞聖人 きらら坂」の石碑があり裏には「昭和三十三年七月建之 石川県金沢市一味同行」と刻まれていましたので、金沢の真宗有志の方々が建立されたようです。

 いよいよ登山口に着きました。入口は2018年の台風21号の影響でしょうか、正規のルートは塞がれ、右の細いルートに進みました。軍手をはめていったのですが、いきなりそれが必要で木々や岩を持ちながらよじ登りながら進んでいきました。

 自信のない方はスキーで使用するストック(正式名トレッキングポール)を持って行くといいかもしれません。日頃の運動不足で、自分も段差のある登山はきつかったです。途中平坦な道もありましたが、多くは足を上げないと進んで行けませんので、ある程度の覚悟が必要です。途中京都市内が見渡せる場所が2ヶ所あり、この景色を見ると心が晴ればれしますね。そこで水分補給やお菓子をつまみながら休憩しました。

  根性なしですが、帰りはロープウェイとケーブルカーを乗り継いで下山しようと思っておりましたので、ロープウェイのロープが見えた時はホットしました。ロープウェイの降り口からケーブルカーの乗り場へ向かう際に3枚100円で「かわらけ」投げもあり、谷に向かって投げるのも爽快でした。

 登りは約2時間、下りはロープウェイ、ケーブルカー、それぞれ3分9分とあっという間にケーブル八瀬駅に到着しました。結構きつい登山でしたが、親鸞聖人を初めとするいにしえの方々の偉大さを感じる訪問でした。

私のお寺めぐり/香華堂報236号[2021/04/01発行]

宝蔵院(黄檗宗) 京都府宇治市五ケ庄三番割34-4

竹笹堂 京都市下京区綾小路通西洞院東入ル新釜座町737

先日、友人に誘われて木版印刷工房の竹笹堂へ行ってきました。ここは寺院や商家・企業の倉庫、美術館・博物館・大学などに眠ったままとなった古い版木・木版画を彫師摺師が再摺りや復刻をされています。

今回の版画体験は5人1組で参加させていただきました。(6人まで可能です)まずは店主が版木や塗料の説明をされます。そして一つ目の版木に色をのせ、ブラシでそれを延ばして紙をのせます。最初は図柄の大枠でその後版木を変えて1枚の紙に押し重ねていきます。版画を押さえる度にその紙を間近で拝見しましたが、最初の大枠にそって綺麗に色が沿ってのっていました。参加者の中に経験者がいたのですが〝自分ではこんなにうまくできない”と感動されていました。店主の模範演技が終わると、次に参加者の番です。体験者は最初の大枠のみでしたが店主の見よう見まねでしましたが、かすれた箇所ができたり、空白の部分に塗料がついてしまったりとうまく行きませんでしたが、バレンを手にするのは小学生依頼で楽しかったです。

そして皆さんと話しをしていましたら、そういえば昨年、鉄眼版の一切経の版木を収蔵されている宇治の宝蔵院に行ったことを思い出し、竹笹堂の店主にそのことをお話すると、よくご存知でした。

それを回想しますと、宝蔵院は数年前から参加している伝統建築を楽しむ会で萬福寺に続いて見学いたしました。本堂とは別に一切経の収蔵庫があり、木版が収蔵庫の天井一杯に整理整頓されて置かれています。土曜日に見学したので、木版を押す方は不在でしたが、ここが2回目の見学の方にお聞きすると平日だと押しておられるお姿を拝見したとおっしゃいていました。卒論などで書いていた400字詰原稿用紙はここの木版が発祥で、また大正12年から昭和20年まで小学校の教科書にもこのお寺の中興といわれる鉄眼禅師のことが掲載されていたようです。

今回は浮世絵である富嶽三十六景の版画の体験をしましたが、竹笹堂のご主人によると版木は元来、お経を広めるために僧侶の方がされていたとお聞きしました。

竹笹堂には店頭にハンカチや手ぬぐいポチ袋なども販売されています。またそのお店の回りは膏薬辻子といって細い路地が入り組み色々なお店がありますので、京都に来られた際のおススメスポットです。

私のお寺めぐり/香華堂報235号[2021/02/01発行]

瑠璃光院 単立(浄土真宗系) 京都府京都市左京区上高野東山55

メディアで紅葉の観光地ランキング上位にくる京都の北、八瀬に位置する瑠璃光院に行ってきました。例年、長蛇の列というニュースを聞いて諦めていたのですが、2020年からは予約制になり、たまたま妻が公式サイトを見ていて11月下旬の休日が空いていたようで、予約時間の11時に合わせて行きました。周辺に駐車場がないので出町柳駅に車を止めて叡山電鉄に乗って向かいました。たまに地元の観光電車に乗るのもいいものです。出町柳駅から目的地の八瀬比叡山口駅までは10分程で到着し、そこから瑠璃光院までは徒歩5分ほどです。10分ほど前に着いたのですが、瑠璃光院の道はさんで向かい側の空き地にテントがあり、検温、消毒し時間が来るのを待っています。入口は古式ゆかしき趣のある瓦屋根の玄関で、その向こうには紅葉が少し見ることができます。

順番が来て階段を上り門をくぐると母屋までの階段も結構ありました。しかしながら、お庭や紅葉が最盛期を迎えていますので、途中で写真を撮ったり木々を眺めたりする方も多くすでに楽しみながら上って行けました。そして、いよいよ母屋の玄関に到着しました。靴を袋に入れ二階に上がります。よく床に紅葉が写った写真が有名ですが、実際は黒い机でした。その机に映り込んだ写真を撮ろうと多くの人が殺到し、自分の番が来るのを待っていました。今回ご紹介した写真はその中でもベストな一枚です。実際の紅葉と映り込んだ紅葉が上にも下にもあるので、全体的に広がりがあり美しいです。逆さ富士ならぬ逆さ紅葉ですね。

また二階では入口で渡された用紙で写経することもできます。一階からも同じように庭が見られますがこちらはより庭に近く畳が敷いてあるので座ってゆっくり見ることができます。その一階の床の間には鳩摩羅什(くまらじゅう)の掛軸が掛かっていました。鳩摩羅什は仏説阿弥陀経や般若心経を訳した僧で、こちらの住職は生誕1600年を記念し2015年にその足跡をたどるため、インドや中国に渡られたようです。また、こちらは岐阜の光明寺の東本願寺系の支院であることからお東の荘厳がしてある部屋もありました。

なかなか予約を取るのが難しいですが、近くに紅葉の名所の蓮華寺も数分圏内ですし、少し高級ですがエクシブ京都八瀬離宮は会員でなくても予約すれば利用可能なので機会があれば一見の価値ありです。