本堂で鳴り物といえば、りんの大きくなった鏧(鏧は磬の下の石が金)子(けいす)ではないでしょうか。鏧子は宗派によって、呼び方がかわります。お西では大鏧(だいきん)、お東では経鏧(きょうきん)と呼び、それ以外の宗派は鏧子と呼びます。今回はご縁があって、富山県高岡市の職人さんに訪問することになりました。

こちらの工房は親子孫の三代で仕事をされていて、現在は子にあたる方がご主人です。まず製作工程から入るところですが、息子さんの仕事の都合で、最初に大きさ6寸ほどの鏧子の調律を実演してくれました。調律にあたっては耳栓をされていました。これは鏧子の音だけを集中して聞くためにされているそうです。まずはバチで鏧子を鳴らして音を聞き、音が鳴り終わるまで、目をつむり注意深く音を聞いておられます。数名でお伺いしましたが、こちらも息をこらして聞き入っていました。そしてその後、鏧子の内側や外側を叩いて調整されていきます。後で、ご主人からお聞きしましたが、「金属音というのは人間にとって一番耳障りのある音なので、それをどのように心地よい音に変えていくかが我々の仕事」とおっしゃっていました。調律し終わると調律前の鏧子と聞き比べ、明らかにやわらかい音になったのがわかり、また余韻も長くなったのがわかりました。また調律には三つのポイントがあり、鏧子をたたいた時が甲(かん)そして、その後に安定して音が鳴るところを乙(おつ)そして最後音が消えそうなところを聞(もん)と呼び、そのすべてがきっちり調律できないと完成とはいえないそうです。調律前から調律後までの5段階の鏧子を富山大学に提出し、科学的にも段階を踏むにしたがって余韻がよくなっていることを示すデータまでもっておられたのは驚きでした。また、たたくバチにもこだわりがありました。通常のバチは木製に白い皮を巻いたものですが、この工房のご主人が考案した、金属の芯をおもりにして通常の白皮をまき、その上から凧紐で巻いたものでたたくと、軽くたたいただけですごく音が響き、またやわらかい音がしたので、また香華堂報で紹介できればと思います。息子さんが出て行った後ご主人が「うちの息子は調律に関しては天才です。」とおっしゃって熱く語っていらっしゃったので、次回もこの話しを取り上げたいと思います。