仏壇や仏具を装飾する金具を錺(かざり)金具といいます。この金具の頭に使う錺という文字、仏具以外では見たことがありません。なぜ錺金具というか申しますと、金で芳しく(かんばしく)飾るということから、‘飾’の文字を使わず、‘錺’の文字を使うようになったようです。

さて、金具を製作するにあたっては3軒の職人さんを経て完成にいたります。まず錺職人さんの仕事ですが、打つべき仏具の型に合わせて寸法取りをします。そして主に素材として使用する銅に輪郭となる型を描いて切り抜いていきます。そしてその内側に草花や唐草の絵柄を彫金師という別の職人さんが、コンコンコンと鏨(たがね)で模様を描いていきます。そしてそれが出来上がると、今度はまた錺職人さんがその回りの空白部分に非常に小さな丸い鏨で1個ずつすべて打っていきます。この粒々のことを魚の鱗に似ていることから魚々子(ななこ)といい、その鏨のことを魚々子鏨といいます。そして出来上がると、それをメッキの職人さんにもって行き、金メッキしてもらい最後にカリヤスという草の染料をハケで塗り、焼いて乾燥して出来上がりです。昔はこの乾燥を火鉢の上に金網を敷いて、その上に金具をのせて焼かれる光景が目に焼きついています。

さて、今回は主役となる錺職人さんの工房へお伺いしました。こちらは親子二人で仕事をされています。親方が前にいらっしゃった工房から独立され今年で44年経つそうです。修行時代は、そこでの厳しい修行時代をへて、今は大きな工房を構えられています。親子二人で並んで金具の樫の木の台(アテと呼ぶそうです)に金床を立てて仕事されています。この台は錺職人さんところでは必ずあります。だからこの職人さんも独立される時にこの台をもらわれたようです。さて仕事の様子を見てみましょう。写真では框金具の縁(へり)を立てる作業をされています。道具も金槌から金切バサミ、コンパスと色々あります。また鏨(たがね)は写真に掲載しているのは一部でこの5倍ほどの引き出しの量がありました。仕事は楽しいですかとお聞きしたら、趣味の延長で、仕事自体をやめたいと思ったことはないとおっしゃっていました。ちなみに皆さんがよく仏具に付いている金具の多くは毛彫りですが、こちらの金具は彫りふくれという技法で作られた金具です。これよりさらにふくらしたのが「うっとり」そして今ではほとんどその技法をされる方がいなくなったうっとりをより深くした「地彫り」という技法もあります。年々技術がすたれて行くのは寂しいことですが、こちらの工房も息子さんが跡を継いで頑張ってくれていますので、これからも技術の伝承をしていってもらいたいです。