職人探訪【金箔編】/香華堂報160号[2014,05/01発行]

金箔押しは私と非常に深い関係の職種です。私の曾祖父が、金箔押し職人として活躍して、京都の仏具組合100年史に名を残しています。それゆえ、祖父も金箔押職人、母も嫁入りした昭和36年当時は金箔押しの仕事をよくしていたそうです。現在でも同じ成影姓の職人が2軒、祖母の親戚筋のものが一軒、金箔押し職人として活躍しています。

さて、近年この金箔に悩まされています。それは、ご存知のように金が投機的に買われ、価格が上昇を続けているからです。それゆえ、契約させていただいた仏具の仕事も、本来施工する時期に価格が上昇していることがよくあるからです。金から金箔への生産の9割以上は金沢で製造されています。これは、江戸時代に幕府から「箔打ち金紙令」が出され、江戸と京都だけに許されていた生産の中、加賀藩の細工所で密かに箔打は続けられたそうです。そんな中、金沢城の二の丸御殿を再建するにあたり、多量の金箔が必要となり、藩の尽力により、許可が下りました。金沢へ行くと金箔メーカーの展示場が多くあります。金沢へ行かれた際には、是非立ち寄ってみてください。

さて職人さんの工房ですが、金箔は一万分の一ミリという薄さなので、夏の暑い日でも扇風機はもちろんダメで、エアコンも直接風がこないように、噴出し口にガーゼをあてている職人さんもいます。実際の仕事ですが、通常は漆で出来上った仏具を工房に持ち込み、数日間をかけて、金箔を押してもらいます。金属製の灯籠などは銅で灯籠の形が出来上がった状態で搬入します。京都の金箔を押した状態はよく、地方で製作された仏具よりも落ち着いた色をしているといわれます。実際に目にして感じられることもあると思います。これは下の漆がつや消しになっているので、上に貼った金箔が落ちついて見えるのです。逆に下の漆がつや有りですと、上の金箔はキラキラになってしまいます。前回、ご紹介したお仏壇ももちろん、この手法で金箔押ししましたので、施主様より「非常に落ち着いた雰囲気になったので、大満足です」と身に余る言葉をいただきました。その京都の素晴らしさをいつもでも後世に受け継ぎたいものです。