仏像を製作される仏師さんのお仕事といえば新調はもちろんのことですが修理のお仕事も多いです。私はいつもお願いしている仏師さんが3名、その他に知己の仏師さんが3名ほどいらっしゃいます。なぜそんなに多くの仏師さんとおつきあいしているかと申しますと、お客様がご希望される仏師の種類や大きさによって仏師さんの得手不得手があり、お客様のご希望をお聞きすることによって依頼する仏師さんが変わってきます。よって私の仕事を横文字でいえば仏像コーディネーター、仏像ソムリエとでもいえばよいでしょうか。今回はその仏師さんの中でも修理を得意としお寺様に出張してその場で素晴らしいお仕事をされる仏師さんの仕事を紹介します。
今回ご依頼いただいたのは和歌山県の本願寺派のお寺様です。総高さ40cmくらいの小さな阿弥陀様ですが、当初台座から倒れそうなので、しっかりと台座に固定してほしいという依頼でした。ご住職が当店まで持参するとおっしゃっていたのですが、お預かりした場合、長くなると1ヶ月ほど本堂にご本尊がない状態になります。しかしながらせっかくお寺にお参りした方々が残念なお気持ちになると思い現地で修理することといたしました。お寺にお伺いしご本尊を拝見すると、ご本尊の足の裏のゲタが短いのと、手の指が折れていることがわかりました。ご本尊が小さいので、手の指も小さい上に、右手は印を結んでいらっしゃるので、本当に直るかと内心不安でした。仏師さんももっと大きな仏像を想定されていたようで、「小さなノミは持ってきていない」といい、どうしようかと思いましたが、「時間はかかるかもしれませんがやってみましょう」と言ってくれたので、まさしく阿弥陀様にお任せするような気持ちで仏師さんに託しました。お天気もよかったので、手元が明るい本堂の縁で作業をいたしました。大きめの木地を手に接着し、そこから薄く手の形に削り落としていきます。その作業の素晴らしさに感動されたのか初め住職だけご覧になっていたのですが、坊守様を庫裏から呼んでこられ、総代さんもお越しになり、実演販売のように職人さんの周りを取り囲みました。両手が仕上がると、古色を施し周りとほとんど違和感なく仕上げました。ご住職をはじめ、大変喜んでいただきました。ついでに上卓の脚が折れていたり前卓の脚がガタガタしたり、香炉の脚も外れていたりしていましたがすべて修理いたしましたので、ご住職から感激していただき、まさに仕事冥利につきます。仕事を終え、こういう優れた仏師さんや職人さんのご縁で仕事させていただくことを心から感謝申しあげるとともに、このような技術を後世に伝えていきたいなと思います。