前回仏具の木地の職人さんの話しをいたしましたが、次は彫刻をほる彫刻師のお話しです。仏具の彫刻といえば、花鳥を中心とします。よってとある彫刻師は植物園や動物園にでかけて、絶えず観察したりスケッチしているとのことでした。彫刻に用いられる花は牡丹、菊、松竹梅など、鳥は実在の水鳥、孔雀、鶴から架空の浄土に住んでいるといわれている鳳凰、龍、麒麟などがあります。また動物もあります。獅子、虎、象やリスも使用されることもあります。どこに彫刻が使われているかといいますと、お西では宮殿の最高級品には脇袖にブドウにリスがあり正面には鶴が用いられ、須弥壇には唐獅子牡丹を用います。また中尊前々前卓には六鳥といって、白鵠(びゃっこう)・孔雀・鸚鵡(おうむ)・舎利(しゃり)・迦稜頻伽(かりょうびんが)・共命之鳥(ぐみょうしちょう)の阿弥陀経にでてくる鳥が組込まれています。彫刻を代表する机なので、じっくりご覧になる機会があると面白いですね。またその前卓の袖彫りには龍の彫刻が左右から睨みをきかしています。一方大谷派の宮殿は正面上に鶴の彫刻、他は袖の上には牡丹の彫刻があります。また中尊前々卓は阿弥陀堂型には四季の草花といって、牡丹、蓮、菊、梅が四ヶ所にはめ込まれ、両端には麒麟が向い合わせで向いあっています。また御影堂前卓には菊水彫刻となります。
ところで、欄間の彫刻はご本山御影堂ではお西は牡丹、お東は天人の彫刻になっていますが、一般のお寺様は人の形をした彫刻多いのをご存知でしょうか。当社でも数ヶ寺で修復させていただいたことがあります。調べたところ、中国の昔話で親孝行のお話を綴った二十四孝から用いられたということがわかりました。それが後の日本にとって、お伽草子に用いられ、欄間の彫刻の題材になったのではないかと思います。参考に欄間の写真は唐夫人といい、姑の長孫夫人に歯がないのでいつも乳を与え、毎朝髪をといてあげていました。そしてその姑さんが死ぬ間際に、「唐夫人の孝行を真似るならば、必ず将来繁栄するであろう」と言いました。このように姑に孝行なのは過去現在珍しいとして、皆褒め称えたというお話しです。
彫刻がすべて教義に結びつくわけではないですが、親孝行など、お説教にも取り入れられる題材が多いのはいにしえの人の思いが現在の私にも伝わっていて興味深いです。