コラム・私のお寺めぐり/香華堂報60号[2005,01/01発行]

コラム

あけましておめでとうございます。本年もお引き立ての程、宜しくお願い申し上げます。香華堂報もこの60号で丸5年がたちました。まだまだ稚拙な文章ですが、我慢強く読んでいただきありがとうございます。これからも、10年、20年と続けるように一歩一歩、歩んで行きたいと思います。さてお正月、同じ朝なのに正月の朝を迎えると気持ちが『シャン』とします。街も何かしら、すがすがしい感じがします。私の正月の迎え方として、本山とお墓におまいりする以外特別決めていることはないのですが、今までで心に残る大晦日から正月の迎え方としては、除夜の鐘を打ちに行ったことではないでしょうか。京都では真宗寺院では仏光寺と興正寺が、他に永観堂、南禅寺、清水寺などでも鐘をつかしてくれます。私も数年前に何ヶ所か回りましが、どこもすごい行列で鐘をつけず、結局永観堂で甘酒をよばれて帰りました。梵鐘といえばもうひとつ思いおこすことは戦時中に資材確保のため、国に供出したことです。あるお寺さまで供出する前の写真を拝見したことがあります。鐘のとなりに住職さん、檀家さんが立っていらっしゃって、写真から『供出』という言葉を実感し、どんな想いでされているのかと思うと鳥肌がたちました。岐阜県のお寺さんでは戦後その供出から戻ってきた鐘が自分のお寺の鐘ではなかったそうです。近年、その鐘も鳴らなくなり、買い替えされることとなった時に業者さんが鐘にある銘から元の持ち主である広島のお寺さんに問い合わせたところ、「新しい鐘はあるけれども、記念としてゆずってほしい」と申し出があったそうです。そのお寺さまも供出された鐘がもう戦争でなくなったと思っていたものが発見され、喜んでいらっしゃったようです。国連本部をはじめ世界各国にも平和の鐘が設置されています。今年こそは平和の鐘がなることを強く思います。

  

 私のお寺めぐり(第七回)

 室生寺

  【宗派】真言宗室生寺派大本山

  【所在地】奈良県宇多郡室生村78

室生寺は近鉄大和八木から三重方面に向かい室生口大野駅でおります。そこからさらにバスで15分ほどのところにあります。途中窓から大野寺の磨崖仏がみえます。下車すると坂道があり橋を越えると、女人高野室生寺の石碑が見えます。仁王門から奥の院まで階段が700段もありますので歩きやすい靴で行かれた方がいいでしょう。さて、史実によると、宝亀年間(770~781)に、山部親王(後の桓武天皇の病気を平癒するために創建されたとあります。

女人高野として有名で、元禄時代に将軍綱吉の母、桂昌院が堂塔を寄進したことから、女人禁制であった高野山に対し、こう呼ばれるになりました。

室生寺の象徴ともいえるのが五重塔ですが、1998年9月の台風7号によって大きな損傷をうけました。しかし、見事に再建され、そのたたずまいは女人高野の名にふさわしく、女性的で、気品あふれる塔です。高さ16.1mで屋外にある塔としては最小で、法隆寺につぐ古塔です。まわりには50mを越す巨木が立っており、これが倒れて屋根や庇が傷つきましたが、再建の際にはその桧皮(ひわだ)が使われました。堂宇や仏像は平安時代から鎌倉時代にかけてのものですが、その中で、地蔵菩薩像は駅近くの大野寺のものではないかという説があり、仏像と後背との高さを比べてみるとよくわかります。全体的にとても素朴で優しく、心が癒されます。ちょっと疲れた方にはおすすめのお寺です。

おすすめ情報

時期『8月7日または8日 曝涼秘法展(虫干し) 11月第2日曜日紅葉まつり(茶会)』

仏像『金堂 釈迦如来像、十一面観音像、地蔵菩薩像』   

      『弥勒堂 釈迦如来像』 

 

   仏具『五重塔相輪(通常は上方の水煙となる部分に、宝瓶を置きその上に八角の天蓋が吊るされている』  

 

建築『五重塔(奈良~平安時代)金堂(平安時代)・潅頂堂(鎌倉時代)<以上国宝>』