コラム 仏壇の壁
昨年から養老孟司氏の「バカの壁」が話題となっています。私も読んでみました。冒頭のところで学生に出産シーンのビデオを見せその結果、男子学生はこの程度なら知っている、これくらいはもう少し習ったというのに対し女子学生が非常に興味深かった、面白かったと答えていることに私は注目しました。本来なら出産を間近に控え多くの情報をもっている女性から、これくらいは知っているという意見が出そうです。これは男性が一般的な知識をもっているから充分で、それより深く知ろうとしないバカの壁であると筆者はいっています。
私も一般の方々に仏壇を販売する際にもこういう壁にしばしば突き当たります。仏壇の壁は「うちは弟で分家だから兄の本家に仏壇があるから要らない」、「仏壇を買うと家に死人がでる」、などです。仏壇は死に場所、先祖をまつるのは本家だけで充分、そんな仏壇の壁が存在しています。私も仏壇を売る立場として、そんな壁を崩せたらと思っています。
お客さまが買う動機をみてみると新仏、新築、法事、念願などに分けられます。それも、私の売る立場が商品の売り込みをして、お客様が買う気持ちになって買われたということは、恥ずかしながら皆無です。お葬儀が終わって満中陰までに揃える、家を新築したから古いお仏壇をお洗濯するとか、法事があるからにそれまでに新調するとかなどです。心から毎日おまいりする仏壇が欲しいと思われて買われる方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。この本を読んで、もういちど仏壇をもっていただくような気持ちになっていただく仏壇の壁を突き破る方法を再考したい、深く考えたいと思いました。
仏具の話
菊灯(台)
御代前、余間の壇上の端などに置くのが菊灯です。本願寺派は各間の向かって右側におきます。御代前にはおきませんが、登高座の向卓の両側に少し小さめの菊灯をおきます。大谷派は各間の両側に1対ずつ置きます。御代前に厨子がある場合、菊灯は置かず輪灯を吊るします。一番下を盆といいますが、香炉のように三本足がありますから、1本を手前(外陣側)に向けます。
菊灯は多くの場合、真鍮製です。盆の上にのっている土台となる部分を菊、細長い部分を竿、その上の花が開いた部分を朝顔といいます。そして、その朝顔の上に載っている三本足を五徳といい、その上にある皿を油皿、薄い銀の色の板はアルミ製で、そして、一番上にのっているものを押えといいます。なぜ、このように細かくいいますと、菊灯や輪灯はお磨きされるので、部品を無くされたり破損されたりすることが多いからです。各部の名称を覚えておかれると部品を補充される際に便利です。文字どおり菊の花の形をしているから菊灯ですが、花びらにあたる部分も16枚になっています。本来は灯心を外陣側に向け火を点けますが、現在は電気を灯されることが多いです。大谷派では本来は菊灯にも荘灯芯(かざりとうしん)します。