コラム/香華堂報37号[2003,02/01発行]

先日、奈良は若草山の山焼きに行ってきました。ニュースではよくみましたが、実際に夜の闇に赤々とした山々を見ると、すごい雄大で幻想的な世界に引き込まれました。奈良は何度となく行きますが、夜の雰囲気というものはまた格別です。本来、若草山の山焼きというのも東大寺と興福寺の領地争いの名残とかいわれていますが、あの猛々しい炎を見ていると、そんなことよりも、何かしら強いインパクトを受けました。密教系のお寺で行われる護摩焚きもそうなのですが、炎というのはそれだけで強い力を感じます。

話は変わりますが、先月と今月東西本願寺で報恩講が勤まりました。その際に夕刻より行われる御伝鈔に初めてお参りしました。暗闇にローソクの灯りというのはそれだけで厳粛な雰囲気に包まれます。そして、先頭にローソクが進み、厳かに御伝鈔が続きます。こちらも厳かな雰囲気に思わず息を呑んでしまいました。

暗闇に灯りというのはそれだけでひとつの演出効果を生み出すものだと思います。昼間には見えていた様々なものがかき消され、その灯りに集中することができます。そしてそれに加え冬の寒さが、その空気に張りつめた緊張感をもたらしてくれます。

そんなことを考え、夜に室内の電気を消し、ローソクの灯りだけでお仏壇をお参りしてました。目を閉じて手を合わせても、まぶたの奥まで真っ暗で、静かな気持ちでお参りできました。そして、目をあけると暗闇にローソクの灯りがボーっと揺らいでいます。現代は夜中でも明るいですから集中することができにくい状況です。昔の人はこういう中でお参りされていたのかなあと思うと今よりはお参りする環境にあったのではないかと考えます。“暗闇に灯り”、何かしら一般の人々にも訴えるものではないのでしょうか。

 

 

 

今回は前回に続き仏具を買う前にPARTⅡとして仏具店についてお話したいと

思います。

仏具店は各本山前仏具店、外商を主体とする店、地方の仏壇店、DMによる業者などに分けられます。

第一に各本山前仏具店の長所としてはご本山の正式なものを求められる、荘厳について詳しい店が多い、在庫を持っている(すぐに入手できる)などの点が上げられます。短所としては価格が高い、カタログに掲載しているため寸法・デザイン変更などの要望を聞き入れにくいなどです。なお、本山前の仏具店でも寺院仏具専門の店は限られているので、その選定は慎重にしなければなりません。

次に外商を主体とする仏具店です。こういうお店は定期的に寺院訪問しているので、本堂をすぐに見てもらえるため仏具の寸法違いが少ない、寸法・デザイン変更に応じてくれることが多いなどのメリットがあります。一方、デメリットとしては在庫を少なくしていることが多いので、納期に日数を要する、実物の見本を見ることができないなどの点があります。

第三に各地方の仏壇店は価格が安い(しかしながら、すべてが安いわけではない卸経由のものもある)、クレームがあればすぐに呼ぶことができる、(すぐに来るかは店によるが)短所としては専門が各地方特有の仏壇を手掛けているので、寺院仏具も同じような仕様にすることがある、仏具によっては自社でやらずに卸問屋を通すため納期に時間がかかる、寸法・デザイン変更などの要望を受け入れにくい、通常寺院仏具を扱うことが少ないため本山の荘厳について詳しくないなどが上げられます。

第四にDMによる格安業者は価格が非常に安い、商品を売れ筋商品に絞り込んでいるので極端に安い場合もある反面、低価格なため製造を外国に依存する場合が多いので、寸法・デザイン変更などの要望を受け入れにくい、仕上がりに疑問

クレームに対して対応が遅いなどがあります。また、通信販売のため送料が何十万というケ-スもあるので費用の確認が必要。

以上のことからどのお店にすべきか迷われることもありますが、以下のものはたとえ高額であっても第一の京都本山前の仏具店かそれに準ずるお店に発注したほうが賢明と思われます。

デザイン面の良さから新調(木地製品)から製作するもの、お寺の中心である御本尊の新調はもちろんのこと、修復についても高度な技術を要するため(京都は仏像専門の仏師にて修復)

輪灯・菊灯などの打物製仏具は技術を要するため、そのほとんどが京都で製作されている。打物製は軽くて丈夫です。

なぜ京都は職人のレベルが高く出来上がるものが美しく、きれいに仕上がるのか理由を説明しますと、第一に各本山が多く参考になる神社・仏閣が非常に多い、

長年の伝統があり培ってきたものの蓄積が多い、それぞれ専門的に分業しているのでスペシャリストがいる、全国からの注文を受けるため職人や業者に対しての要求が厳しく自ずと技術が上がるなどがあげられます。

 以上を参考にしていただいて、仏具の購入や御修復の際に失敗のないようにしていただきたいものです。