コラム・仏具の話(金灯籠きんとうろう 大谷派)/香華堂報47号[2003,12/01発行]

コラム
 紅葉のシーズンですね、この時期は一年のうちでも特に楽しみな季節でもあります。というのも、普段非公開の仏像やお堂などの一般公開が行われるからです。特に京都、奈良はそういうイベントが目白押しです。そういった寺々を訪問して思うのですが、真宗寺院にはみられないものがよくあります。大きなものですと五重の塔や観音堂、小さなものですと朱印やお守り護摩木などがあげられます。
 先日とあるお寺様の休憩所で休んでいると、近くのご婦人が「この前○○寺でお守りを買って、家内安全とお願いごとして帰ってきたら、足を骨折しちゃったわ。あのお寺にはもう二度と行かない。」と話しているのを耳にしました。私はびくっとしました。お守りを魔法の杖のように思われているのですね。人はお守りの効能を期待して買い求めますが、その反面、効かなかった場合の心の移ろいやすさを感じます。女心と秋の空ですね。
 しかしながら、他宗派でも個人的にいいなあと思うものもあります。私はお寺におまいりすると、必ずその各お寺の由来や仏像・仏具などがのったパンフレットを求めますが、唐招提寺でその巻末に朱印と寺号を書いてもらいました。朱印は西国三十三ヶ所霊場のものや、弘法大師八十八ヶ所巡りのものが有名ですが、何かしらそのお寺様をお伺いした記念になるようなものがあれば、旅行から帰ったあとも思い返して楽しみになります。唐招提寺の場合はこちらからお願いしてかいてもらった訳ではないですが、そのパンフレットを見ると日付も入っているので、何年前に行って寒かったなあなどと季節も思い出すことができます。真宗寺院の場合もご旧跡めぐりなどで何かしら記念になるようなものがあれば、おまいりするのも楽しみになるかもしれませんね。

金灯籠(きんとうろう)(大谷派)
 大谷派も同じく宮殿やお厨子の手前に1対吊るしてあるのが金灯籠です。一番上のたまねぎの形をした部分を擬宝珠(ぎぼし)、そしてその下の広くなった部分を笠、扉のある部分を火袋、そしてその下を足といいます。大きく四つの部品からできています。大谷派は本山も一般寺院もご門徒のお仏壇に至るまで丁足型のものを用います。
金灯籠の修復は金メッキと金箔押しにし直す方法がございます。現在のものがどちらの場合でもお好きな方法でし直すことができます。ただし金メッキの場合、注意しなければならないことがあります。メッキの水槽につけ電気処理するため、一番上の擬宝珠(ぎぼし)の内部が腐食していた場合、金メッキしたあとで、それが青さびとして出てくる場合があるのです。他の部品は真鍮または銅地の板からできた打物(うちもの)であるため、そのようにはなりません。が、擬宝珠(ぎぼし)の部分は多くが鋳物であるため、戦後すぐの金灯籠だと、良質なものがなく、このようなことになる場合もあります。
これを防ぐには、仏具店に実物を見てもらってから仕事にかかってもらえればいいのですが、専門の業者でもメッキの水槽につけなければ、分からない場合もあります。 その点、金箔押しの修復は電気処理せずに洗った金灯籠に金箔を押していきますから、このような心配はございません。