コラム
先日、NHKの“HAIKU 奥の細道を行く-海外から来た俳人達”という番組がありました。外人さんたちが芭蕉のたどった道を歩き、芭蕉の精神を感じ取り俳句を作り、歩いていくという番組です。このツアーの後、ハンガリーの女性は“奥の細道”を翻訳し、またクロアチア人の女性は俳句を祖国の子供たちに紹介して、戦争で傷付いた心を癒したいと言っていました。俳句は海外では俳句moment(モメント)と呼ばれ高く評価されているようです。自然と人とをつなぐ一瞬をとらえるものとしては世界中では日本にしかないと言っていたアメリカ人の青年もいました。TVは山形の山寺や仙台の松島が映し出されていました。クロアチアの女性は松島の観光船の中で風景を見ながら、このように美しい景色を見ることができることを幸せに思うと涙を浮かべ喜んでいました。
また、この前白洲正子展が大阪で開催され、彼女や夫の白洲次郎の収蔵品が展示されていました。白洲正子女史は明治生まれで、吉田茂と親交のあった白洲次郎と結婚し、彼女所蔵の骨董品には高い評価がされています。彼女は骨董品だけでなく、日本各地を歩き、特に近江(現在の滋賀県)を愛しました。そして、出版物などを通し、蒲生町の石塔寺(いしとうじ)や栗東市の狛坂廃寺(こまさかはいじ)の磨崖仏などを世に紹介しました。滋賀には幾度となく行きましたがこのような遺跡があることをこの展覧会に来るまで、まったく知りませんでした。
私にとって日本の地にはまだまだ未知なるものがあり、それを感じ取る細やかな感性は日本の先人から、私を含めた現代の日本人には失われつつある反面、むしろ外人さんの方が遥かにあるような気がしてならないと感じました。
仏具の話 本山用輪灯(真宗大谷派用)
前卓の両側に天井から吊ってあるのが本山用輪灯です。中尊前だけでなく両尊前にも吊るします。大谷派の輪灯は仏具用語的にいいますと、無装飾丸蔓輪灯(むそうしょくまるつるりんとう)という真宗各派に比べ菊や桐のように文様のない輪灯として区分されています。また、つるの頂上に切子型の金具に鐶(輪)をつけ上方より傘のつるで直接吊り上げます。よって大きな特徴として間吊りがなく総高さも他の輪灯に比べ低いです。火皿の中には油皿二枚を入れますが、台として三本足のものを用い(これを五徳(ごとく)といいます)、そして通常芯切り用の香箸を備えておきます。法要時には天井から傘の上まで、瓔珞が数本吊られ豪華になります。通常は質素に法要時には豪華にとメリハリの利いた荘厳といえます。
法要時には輪灯に荘灯芯(かざりとうしん)をします。正式には菊灯にもします。輪灯の大きさにもよりますが、中尊前は6本から10本、両尊前は6本から8本くらいを束にし、片方を止めて、軽く渦を巻くようにし、油皿の下の直径と同じ大きさの輪にし、止めた方の近くに挟み込みます。これを1対につき4本つくり各輪灯に二本づ下の油皿の上の載せ、ご尊前のほうに羽根を広げたようにして上の油皿で押さえます。仏具店、ローソク店にもよりますが、長灯芯一束から二束あれば充分足りるでしょう。