コラム
お盆休みを利用して、浄土真宗最古の本堂である岐阜県高山市にある照蓮寺様へお参りに行ってきました。本堂は室町時代に建築されたもので、浄土真宗最古の建築遺構です。今から480年も前のことです。昭和35年までは飛騨・荘川村(しょうかわむら)にありましたが、ダム建設により、現在の高山城跡に移築されました。昭和31年には国の重要文化財にも指定されています。
寺院としては珍しく住宅建築の書院造りになっています。外観の屋根のそりはゆるやかで美しい曲線であるのに対し、これで大丈夫?と思うくらいの細身で直線的な柱や建具が用いられています。柱や扉などに手を触れると、長きにわたってこの本堂を支えていることが手を通して感じることができます。本堂の内部は、現在の真宗寺院によく見られるご本尊が手前にせり出している後門柱と後門がある形式ではなく、ご本尊と両尊前が一列になっています。この形式は押板形式といわれ、現在の床の間の原型といわれています。簡素に見えますが、外陣でご本尊の前で手を合わすと気持ちも凛とします。そして、外陣と内陣の境に目を移すと、欄間はすべて筬欄間でその下は襖になっています。簡素な造りで、まさに道場という雰囲気です。
その後、近くの高山陣屋にも行ってきました。陣屋とは昔のお役所です。その中にこんな説明がありました。昔は家を建てる場合、陣屋にお伺いをたてて、許可をもらって家を新築したり改築したりしたそうです。それも古材を混ぜて建てたそうです。木は貴重だったのでしょうね。そんな言葉を耳にすると、いにしえの人々がいかに木に対しての畏敬の念をもっていたのかが分かります。
照蓮寺様もそのような苦労によって建築され保存され、今に至ったと思うと、よりこれから先も残っていただきたい日本の財産だと思います。
仏具の話
掛盤卓(かけばんじょく)、春日卓(かすがじょく)、経卓(きょうじょく)
内陣廻畳(まわりじょう)の祖師前側一席目と御代前側二席目に1対置くのが掛盤卓、春日卓です。御影堂型の掛盤卓は足の上の腰の部分に極彩色された蓮水の彫刻があり、阿弥陀堂型の春日卓はそれがなく簡素な形です。天場はいずれも黒塗りです。四方から見える位置に置くため、どの位置から見ても金箔が押してあります。このような卓を四方正面といいます。中尊前上卓や中尊前々前卓にもこのようなものがあります。卓の上には御和讃が入った和讃箱を置きます。なお、本山では廻畳より高さの高い向畳(むこうじょう)にこの卓を置くため、下台があります。それで、一般寺院向けにも黒塗りの下台があります。掛盤卓の名前のいわれは真宗以外でよく使う掛盤膳の足に形がよく似ていることからこの名が付いたと思われます。春日卓は古くからこの足の形を鷺足(さぎあし)といい、その形を真宗にも用いたように思われます。
三席目、四席目と続く場所には一般的な和讃卓を置きます。これは一般的な経卓を置かれることが多いです。この経卓は出し入れが頻繁にする仏具なので、お求めやすい普及品もございます。