職人のつぶやき 蒔絵師編

お仏壇の引き出しや猫戸に花鳥や唐獅子の絵が描いておましゃろ。それを描くのが我々蒔絵師の仕事です。蒔絵ちゅうのは、先端にメッシュあてた小さな竹筒をトントンと軽くたたきながら、金銀粉を蒔いて絵柄を描くことをいいます。下絵から最後の蝋色仕上げまで含めると単純なもので、20工程ほどあります。わかり易く、和讃箱や御文箱に紋が入っているのを例にあげてみましょか。蒔絵の仕方には何種類もやり方がおますねん。あんまり、ぎょうさん説明しても分からへんと思いますから、漆面に描く金の紋を三とおりくらいでお話させてもらいます。まずは、簡単なやり方から。漆で紋型を描き、その上に金粉を蒔くだけで仕上がる “平蒔絵”、紋の部分を漆で盛り上げて金粉を蒔く“高蒔絵”、紋の型に金粉を蒔き、その上を黒漆塗で塗り固め、木炭で研ぎだす“研ぎ出し蒔絵”があります。盛り上がってたらいいちゅうもん違います。その盛り上げ方が、漆か金粉かで質が違ってきます。そして、最後のこの研ぎ出す具合が難しいんですわ。金粉は直径1ミリ以下なので、その断面積が最大になる部分まで研ぐわけです。浅くても深くても金の輝きが鈍くなります。経験と勘がものをいいますな。

 新しい絵柄や手の込んだものになると、何回も試し描きしたりします。集中力と根気のいる仕事です。そやさかい、“ここ一番”というときは、夜に描いたりします。昼間は人の出入りがあるので、集中して描けまへん。 そやさかい仕上がった時の喜びは大きいです。出来上がったものは次の職人さんに渡って仏壇や仏具に組み込まれていきます。

仏さんの前でおまいりしゃはった後にたまにはそういう蒔絵の仕事もみとくなはれ。職人の魂が見えてくるかもしれません。じゃあ、つぶやいてんと、そろそろきばりまひょ。

 

仏具の話(寺院建築)

 今回は宮殿、お厨子の話に入る前に予備知識として、寺院建築のお話をいたします。お寺に訪問する際、まず、よく目に付くのが屋根です。そこで、屋根の形を中心にお話したいと思います。まず、図のように本をなかば開いて伏せた形を切妻造(きりつまづくり)、鐘楼や山門によく見られる屋根です。二番目は面が四つからなる寄棟造(よせむねづくり)です。雨が四方に流れることから、四注造(しちゅうづくり)ともいいます。有名な建築としては奈良の唐招提寺があります。三番目は五重の塔や六角堂にみられる、四つの面が頂点に集まったもの、これを宝形造りといいます。これは、屋根の一番上に宝珠(ほうじゅ)を「昔は宝形(ほうぎょう)と呼んでいた」をのせることから宝形造というのです。四番目は寄棟造りの上に切妻を上に載せた形をした入母屋造り(いりもやづくり)です。そして、入り口がAの方から入る本堂を平入り、Bの方から入る本堂を妻入りといいます。寺院の本堂に多い屋根の形です。以上が基本的な屋根の形ですが、平入りの場合、屋根の形が山形になっているものがあります。これを唐破風といいます。曲線を付けるのに手間がかかりますので、本山でも、天皇のお使いをお迎えする勅使門(ちょくしもん)によくみられます。以上をふまえて来月から各派別にお話していきます。こう、ご期待?