職人のつぶやき 社寺金具
うちらの仕事は障子のレールや丁番、金灯籠や輪灯の吊金具に額受金具など仏具を支えたり、吊り上げたり、しっかり仏具を固定するための金具を作ってます。仏具に打ってある金色にメッキしたきれいな錺金具(かざりかなぐ)は主に見せるための金具。それに対し社寺金具は実際に加重がかかる金具を作ってます。そやさかい、錺金具は銅地ですけど、私らが使う材料は主に鉄をよう使います。もちろん火にかけて形を整えていきます。鉄は“熱いうちに打て”っていいまっさかいに、ぐずぐずしてると黒うなってしもうて、何べんも焼かんなりません。けど、早うたたくと、いっそう赤うなって、一回焼いただけで思うままの形ができる。熟練せんとできしまへん。うちの仕事では一番しんどい仕事ですわ。こうして先を丸めたり、角ばったりしていくわけですな。そやけどいくら脇役いうても“かっこう”が大事。きれいにみせんとあきまへん。梵鐘などの重いものの吊金具をつくるときは、吊金具自体も太い鉄材を使いますし、曲げるのも一苦労です。額受け金具は額を支えるという役割と見せるという2つの役目があります。そやし、材料に真鍮を使います。真鍮は銅より硬く、鉄より加工しやすいので、模様をつけたり金メッキするのにも適しています。お寺や神社によっては天井の高さや長押(なげし)の角度が違うので、それぞれに合わせて、長さを変えたり、角度を緩やかにしたりします。そやさかいオーダーメイド、特注品です。応用がその都度きかんとあきまへん。脇役ですけど縁の下の力持ちで、無くてはならない仕事や思ってます。さっ、つぶやいてんと、そろそろきばりまひょ。
仏具の話
供笥(大谷派)
大谷派の供物は主に杉盛華束(すぎもりけそく)と須弥盛華束(しゅみもりけそく)があります。どちらも小餅を用い、杉盛華束は白ばかり、須弥盛華束は図のように傘のようにし、間に藍や紅など色付きのものが入ります。供笥は八角形のものを用います。木地供笥と箔供笥の二種類ありますが、木地供笥は白木地のもので赤白の方立を用い、杉盛華束の場合に使用します。軽い法要の時に用います。これに対し金箔を押したものを金濃(きんだめ)供笥と呼び、金赤の方立を用い、須弥盛華束の仏具とします。報恩講や落慶、御遠忌など重い法要に用います。金供笥には、蓮水の絵を描いたものもあります。また、銀箔を押したものを銀濃(ぎんだめ)供笥と呼び、銀紺の方立を挿し杉盛華束の仏具として用いますが、これは葬式・中陰にしか用いません。また、このような時には、この他に図のような根菓餅(こんかぺい)を用います。これは四角の筒にいろいろなお菓子や根菜類のものを貼り付けお供えするお供物です。この場合、仏具は八角のものではなく、銀濃の四方という四角いものを用います。お正月の鏡餅は図のように同じ大きさの餅を積み上げます。こうしてみると大谷派のほうがお餅を供物として用います。