職人のつぶやき(仏具鋳造師)
花瓶や香炉いうても、一人の職人が作るんやおまへん。大まかな型をつくる鋳造、そして文様を彫る彫金、仕上げに色を付ける場合は色付(いろつけ)、磨き上げて金のピカピカにする場合は磨き、というようにそれぞれ専門の職人の手に渡って出来てきます。大谷派の鶴亀を例に上げてみましょか。鋳造で出来上がった時は、羽根の部分などは無地の状態で、でき上がってきます。金属を鋳造することを“吹く”といいますが、吹き上がった真鍮製の鶴亀は白っぽい色してます。その上に、鏨(たがね)などを使い、コンコンと打っていき、模様を付けていきます。より上等なものはその“彫り”を細かく彫ったり、多くしたりして、違いを出していくわけですな。大谷派の香炉の場合そのような“彫り”の細かいものを倍彫(ばいぼり)っていいます。上にのる獅子も龍になります。また、ごくごく小さな丸い点は“さかな”の表面をしていることから魚々子(ななこ)っていいます。同じ強さで重ならず、同じ大きさにきれい打っていくには熟練を要します。そして、長い時間かけて彫りあがったら、“磨き”専門の職人さんの手に渡り、白っぽいものが皆さんよくご存じのピカピカの金色した鶴亀の燭台になるわけですな。宣徳の色付けの場合はその真鍮の表面に漆をつけて、高温で熱し、付着させるわけです。古いものをもういっぺん色を付け直す場合は表面に付いた汚れやロ-をきれいにとってからでないと表面がツルツルになりません。最後まで、目の離せません。こうしていろんな職人さんの努力がこの仏具の中に込められているわけですな。まっ、つぶやいてんと、そろそろきばりまひょ。
本願寺派具足
具足のお話に入る前に、具足という言葉について、簡単にご説明いたしましょう。具足とは簡単にいうと道具を指します。だから、仏様の道具なので、仏具と呼びます。また、“物事が十分に備わっていること”という意味もあります。だから、五具足は五個で一組、五個ワンセットということです。それでは、本題に入りましょう。上卓には四具足、すなわち香炉一個、華瓶一対、燭台一個を置きます。五具足は前卓に置く仏具を指します。香炉一個、花瓶一対、燭台一対、香炉は登高座でお焼香するとき以外は、外陣側に青磁の土香炉、内陣側に香炉台を置いて、その上に金の香炉を置きます。香炉台には洲浜(すはま)型や梅型のものを用います。五具足が法要時のお荘厳であるのに対し、三具足は平常時に用います。香炉、花瓶、燭台、それぞれ一個づつです。種類は、菖蒲型と六角型の二種類があります。宣徳色付の場合、色落ちしたらどうしたらいいの、とういうご質問をよく受けます。金の真鍮製仏具の場合、磨けば光りますが、黒の宣徳色付けは簡単に艶だしする場合、専用の液がございますが、もっときれいにしたい場合、専門の業者に出して、宣徳色を付け直すこともできます。五具足のどれもが対称的なバランスのとれた仏具といえるでしょう。