職人のつぶやき
(仏具組立師)
今までいろんな職人さんの話、聞いてくれやはったと思います。もう一度おさらいしときまひょか。まず木地師、そして彫刻師、漆塗師、金箔押師、彩色師、錺金具師、蒔絵師、蝋色師です。それらの職人さんを総称して、八職(はっしき)と呼びますねん。いろんな職人さんの手をへてでき上がってくるわけですな。それをお客さんにきっちり納まるように組み立てていくのが私らの仕事です。まず組み上げる前に錺金具(かざりかなぐ)を部品ごとに打っていきます。組み上がった時に各部がどの方向に向くかを見極めながら、金具の根差し(金具の上下方向)に気をつけながら打っていきます。平らなところに打つのは簡単ですが、曲線部分が難しいです。特に宮殿やお厨子の丸柱は鎧打ち(よろいうち)いうて何枚も金具を打つので高度な技術がいりますねん。
金具が打てたら今度は組み立てていきます。組み立て方にも仏具によって特徴がおましてな。お厨子や須弥壇は下から組みますけど、前卓などの机は上の部分から組みますねん。
卓(しょく)は脚が大抵細うて長いでしゃろ。そやさかい、下の部分から組むと、安定が悪うて、うまいこと組めまへん。
そして、いよいよ納入です。机などは置いたらしまいですけど。お厨子などは本堂の壁などに固定するのに銅線などで引っぱたりします。須弥壇も下須弥、彫刻部,上須弥,の順に組み立てて、最後に後ろから“つなぎ”ちゅう木で各部を固定します。
こうして、八職の職人さんなど、いろんな手をへて仏具がお寺に納まり、いろんな人に長い間、拝まれるわけですな。一人だけでは決してできしまへん。そう思うと私らの仕事、遠い昔から受け継ぐ尊い職業やと思います。まっ、つぶやいてんと、そろそろきばりまひょ。
宮殿 大谷派
大谷派宮殿の屋根は二重屋根八っ棟造りといいます。文字通り屋根が二つあるのと,棟が八つあるからです。(後軒付のみ八つ)屋根は下から初重は正面、両脇に唐破風、二重目は正面が千鳥破風(ちどりはふ)脇が切妻になっています。柱は10本あります。屋根と本体をつなぐ組物は三つ手組といい、正面と両脇に肘木がでています。本派の宮殿に比べ組物の段数が少ないですが、これは、屋根が二重のため、段数を多くすると屋根の比率が高くなるため、バランスがよくないからです。そのため、礼盤部分も本願寺派のように箱型ではなく、一重のものになっています。大谷派の宮殿の大きな特徴は二重屋根と柱が黒いことです。柱だけでなく、屋根も黒を基調としていますが、錺金具がいたるところに打ってあります。屋根は本葺きといって丸瓦部もあります。そして丸瓦の先端にも金具がついています。この先端の丸い金具が巴(ともえ)の紋の形をしていることから、巴金具とよびます。柱は10本すべてに鎧打ちされた金具が打ってあります。金の錺金具と黒の漆塗り、これを光と影の世界とおっしゃった先生がいらっしゃいました。
大谷派の宮殿は“雅さ”よりも建築の“壮大さ”を表した宮殿といえるでしょう。